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   trifle with...
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 ベッドから飛び降りたかと思うと、その勢いのままドアを抜け、あっという間に駆け去って行く華奢な後ろ姿を、カイは呆然と見送った。
 その姿は呼び止める間も無く見えなくなってしまって、元気な子だな、とそんな事を考えつつ、しかし、とふと我に返って自分の体を見下ろした。
 構造も複雑で、おいそれと脱がす事も難しいはずの聖騎士団の制服はすっかり乱されて、肌も露にされてしまっている。
 自分が無防備すぎるのか、ブリジットの無邪気さに負けているのか。
 どちらにしろ、年下の少年に好きにされるなど情けない事には違いない。カイは深く溜め息をつきながら服装を整えにかかった。去り際の彼の言葉も気にかかる。
「・・・まさか、本当に呼んでくるはずもないでしょうけど・・・」
 ソルは元々定着した住処を持つわけではなく、探し出すのも一苦労のはずで、こんな短時間で連れて来れるはずはなかった。
 そうは思うものの、あまりにも勢いよく飛び出して行ったブリジットに、不安を覚えないでもないカイである。
 大体彼は、何と言ってソルを連れてくるつもりだろうか。あの可愛い声で、『カイさんが感じてしまったので助けて下さい』とでも言うのか、と考えた所で、カイは自分の想像に赤くなり、またすぐに青くなった。
 そんな言葉を聞いたソルがどんな行動に出るのかは、容易に想像がつく。ここはすぐにでもこの場から離れるのが得策だ。
 カイがわたわたと身なりを整えようとすると、先程飛び出していったブリジットが丁寧に閉めていったドアがカチャリと開いた。
 同時に響くのは、吐き捨てるような低い声。
「いいザマだな」
「ソ、ソ、ソルっ?!」
 カイは思わずベッドの上で飛び退いた。慌てて声のした方を見やると、本物のソルが立っている。
 まさか、とは思うものの、その出で立ちも赤い瞳も封炎剣も、どれもが疑いようもなくソル本人である。カイは一気に蒼褪めた。
 来るにしても何でこんなに早く来れるのだ、反則ではないか、とソルを見上げるが、ソルは面倒そうに頭をかきながらドアを閉め、カイの視線を受け流してベッドへと歩み寄った。
 警戒心も露にカイが前をあわせながら身を縮こませると、ソルは更に溜め息をつき、咥えていた煙草をサイドテーブルのティーカップに投げ入れて、どさりとベッドに腰かけた。二人分の重みにスプリングが軋む。
 普段であればその行いに目くじらを立てて怒るカイだが、しかし今はこの状況を把握しどうにかする事の方が先である。
 ソルは暑苦しそうに上着を脱いで捨てて、ちらりと馬鹿にしたような目でカイを見た。
「っとに、遊ばれやすい坊やだな・・・」
「・・・・・・べ、別に・・・好きで遊ばれてる訳じゃ・・・っ」
 一応自覚はしているらしい、ソルの呆れた声にカイは悔しげにそう答える。
 これがそれこそギアやそこらの悪党であれば、決して引けは取らないが、ああも純粋な興味と悪意のなさで迫られると、抵抗するにも抵抗しにくい。
 だからといって、もちろん好きにされてもいいという訳ではないのだが。
 カイが頬を赤らめて俯くと、ソルはやや身を乗り出して尋ねた。からかう口調で、それこそカイで遊ぶように。
「あのちっこいガキから聞いたぜ。感じすぎて困ってるんだと?」
「〜〜〜っ!! ち、違います!」
 いくら何でもあんまりだ。ブリジットからの伝言を楽しげに伝えるソルにカイは力一杯首を振った。そんなにあからさまな伝え方をしなくてもいいじゃないかとこの場にいない少年を恨むカイだが、それで事態が好転するでもない。
 それに否定した所で、ソルがそれを受け入れるはずもなく。
 じりじりと、少しずつ距離を詰めて寄って来るソルに、カイは只ならぬものを感じ自分も距離を取るため後退りした。
 が、あっさりと壁に追い詰められてしまう。さっさと封雷剣でも取って斬りかかればよかったと物騒な事を考えるが、抵抗した所でやはり無駄に終わるだろうとカイは諦めたように俯いた。
 紅蓮の双眸に宿る、強い欲情の色。
 こういう目をしたソルは、決して自分を逃がしてはくれない。
 今までの経験でそれを知っているカイは、大人しく身動ぎを止める。抵抗すればするほど喜ぶのだ、彼は。
 ソルは案の定、つまらなそうな顔をしてカイの頤に手をかけた。悔しさに赤らむ顔を覗き込む。
「大人しくなっちまったな」
「どうせ、好きにするくせに」
 せめてもの抵抗にとそう呟けば、ソルは笑った。
 その質の悪い笑いに、カイは今更ながら肩を竦めた。ソルとの行為は初めてではないし、嫌いというわけではないのだが、その笑顔には悪寒のようなものを覚える。
 何かを企んでいる目だった。そしてそういう時にはろくな目に合わされない。
 変化の現れたカイの表情にソルは口元を更に歪める。
「へえ、覚悟は出来てますってか?」
「そ、れは・・・その、そういう訳じゃ・・・・・・・あの、ソル・・・?」
 尋ねられる声も既に楽しげで、カイは応える声もしどろもどろになってしまった。けれど壁に背をつけすぐ目の前にソルのいるこの状態では、もはや逃げる事など不可能だ。
 ソルの手が、乱れたままの法衣にかかる。カイは金縛りにあったように動く事が出来ない。
 するりと法衣を脱がされ、すぐに晒された胸の頂きに触れられてしまえば、体には勝手に欲望の灯がともった。
「あ・・・ん」
 武骨な手がその平全体で薄い胸板を撫で、色付き尖りたった頂きを指で押し潰すように愛撫する。もう片方にはソルが顔を伏せて、ねっとりとした舌が舐めまた甘く噛みつかれ、カイは声を殺すべく歯を噛み締めた。
 背を既に壁に押し付けられているせいで、仰け反ることも出来ない。
 ソルの空いた片手は、肩から脇、そこからゆっくりと降下して腰のあたりを刺激しつつズボンにかかった。
 しかし一応は座ったままのこの姿勢では、脱がす事は難しいのであろう。胸元でソルが愛撫を続けつつ呟いた。熱い吐息を吹きかけられただけでも体は震える。
「腰、浮かせろ」
「・・・・・・」
 高慢に命ぜられて、カイは僅かに逡巡したものの、ベッドに手をついて素直に腰を浮かせた。ソルは逡巡などせずに下肢を露にし、腰となだらかな双丘を抱えつつ胸元から唇を徐々に下へ移動させていった。
 下腹から、反応を示し始めた自身へと舌が滑る。
「ひぅ・・・っふ」
 尖らせた舌先で欲望をつ、と舐めあげられ、カイは甘く息を吐きながら顔を埋めるソルの頭に手を伸ばした。
 硬い髪に指を絡め、殆ど反射的な動きで押し退けようとするが、先端を口内に含まれ軽く吸われれば、逆に押し付けるような動きをしてしまう。
 しかしソルは、硬くなったカイの欲望からはあっさりと口を離し、さらに高く腰を持ち上げて奥まった部分を暴いた。
 膝を胸につけられるような苦しい体勢を取らされ、またソルの眼前に秘所を晒されている羞恥に、カイは不安げな声でソルを呼んだ。
「や・・・ソ、ル?」
 勃ち上がったものもそのままにされ、つい先を強請るような声になる。ソルは応えずに、まだ硬く閉じたままの蕾を指先で解すようにして、舌を這わせた。
 独特の柔らかさを持つ熱いものを秘所に感じ、カイは大きく体を跳ねさせた。それがソルの舌だ、と判じると快楽よりも強い羞恥に全身が熱くなり、顔を赤らめて泣きそうな声を上げた。
「だめ、ソルっ・・・そんな、とこ・・・・・や、きたな・・・っ」
「そんな良さそうな声で何言ってやがんだか」
 力の入らない手で懸命にソルを押し留めようとするカイだが、それも呆れた声とさらに奥へ舌を忍ばせられる事で一蹴された。
 指で入り口を押し広げ、唾液を流し込むように内部を濡らされる。時折耳に届く淫猥な水音がさらにカイを追い詰めた。触れられぬままの自身もいやらしく液を零し、瞳には涙が滲んで。
 カイは堪らなくなってソルから手を離し、両手で顔を覆った。行為そのものより、どうしようもなく感じている自分が恥ずかしい。
 唾液に濡れた秘所に何本かの指を咥え込ませ押し広げつつ、ソルは顔を上げて放置したままだったカイの欲望へ再び唇を寄せた。昂ぶったものは張り詰めて、触れて欲しいと強請るように震えている。
 軽く口接けると、ビクン、とそれだけでなく体全体が反応した。
「うあ、はっ・・・・・あ、ァ!」
 秘所も刺激しながら口腔に咥えてやれば、欲望は呆気なく弾けてソルの口内に白濁を放った。それを飲み下しながら、ソルはカイを下から見上げる。
 解放に白い肌は赤く色付き、開いた唇からは荒い呼気が漏れていた。欲望全てを飲み込んでやったのを見ていたのか、潤んだ瞳は気まずげに逸らされて、恥らうその表情はかえって妙な色気を醸し出してソルを誘った。
 青年のこんな表情を知っているのは、自分だけだ。それは優越感でもあり独占欲でもある。
 誰も知らなくていい。自分だけでいいのに。
 ソルはふと脳裏によぎる少年の笑顔と言葉とを思い起こし、湧き起こる苛立ちを否定せず、体を起こして脇に放ってあった荷物を探った。
 目当てのものはすぐに見つかり、ソルはさらにカイの足を開かせて呟く。
「坊やは俺じゃなくても感じるんだよな。だったら、今日はコッチで楽しんでみるか?」
「え・・・?」
 舌と指とで責められた余韻に蕩けた瞳でソルを見れば、何やら小さな箱を取り出して開けている。中身は、銀色の、一見したところ卵のように見える物体だった。
 ソルはにやりとして下肢へと手を伸ばした。先程慣らした秘所を指で開く。
「や、なに・・・? ぁうっ」
 ひやりとした硬いものが宛がわれたかと思うと、そのまま充分に濡れた内部に押し込まれ、カイは怯えたような目でソルを見た。
 足を開かせた間で意地悪く笑っているソルは、その手に小さな機械を持っている。どうやら何かのスイッチのようだと思うのと、内部に収められたものが動き出したのは同時だった。
 金属か何からしい、硬質な感触のあるそれは、敏感になった内部で乱暴に蠢く。
「ひあっ! は、な・・・、なにっ・・・? やあ、ん!」
 慣れない感覚にカイはその身を捩じらせて甘い声をあげた。
 小刻みに震え、また時折ぐちゃりと水音を立てて激しく暴れるものに、カイは恐慌状態に陥った。助けを求めるようにソルを見上げても、ソルは膝を押さえて足を開かせたまま、その濡れてひくつく部分に目線を落とすばかりだ。
 瞳からは涙が零れ、頬を伝って顎から落ち、シーツに吸い込まれていく。怖いと思うのに、それでも体は極度な反応を示して、カイは機械のもたらす刺激に打ち震えた。
 身を繋げるような圧迫感がない分、直に快楽だけが脳髄にまで響くようだ。思わず締め付けてしまえば子細にその動きを内部で感じてしまい、ぞくぞくと背筋に電流が走る。予想のつかない動きはカイをひどく脅えさせ、感じさせた。
 ソルが手にしているものが制御装置なのだろう、強く弱く、ソルはカイの様子を確かめながら巧みに機械を操って追い上げていく。
 身の内で震えるものが一際大きく震えだし、カイはたまらず悲鳴じみた声でソルを呼んだ。
「いや、やだぁっ・・・ソル、嫌ぁ!」
「しっかり感じてるじゃねえか・・・もっと奥がいいか?」
「違っ・・・やめて、取って・・・ぇ」
 必死に懇願する声も、機械に翻弄されて上擦り、蕩けている。
 甘美な喘ぎ声にソルは目を眇めた。自分が仕掛けた事とはいえ、自分以外のものが与える快感に青年が狂う様子は、倒錯的ではあるが心を冷めさせた。
「ふん。こんなもんにでも感じんのかよ」
 冷たく言い捨てたソルは、膝から手を離し、腕を引いて快楽に震える体を背中から抱えた。顔を逸らそうとするカイの顎に手をかけ、片方はスイッチを握りながら足を開かせて、再び勃ち上がっているものとひくついている秘所へ顔を向けさせる。
 惨めな自分の反応をまざまざと見せ付けられ、カイはせめてもの抵抗に、ソルの腕の中で弱々しく体を捩らせた。
「いやあっ・・・」
 首を振って逃げようとしても、ソルがそれを許さない。足を抱え上げるようにして後ろから手を回し、器具を飲み込んだ入り口を指先でなぞると、そのまま差し入れてさらに奥へ押し込む。
 すると感じやすい場所に当たったのか、抱きこんだ体が大きく鮮魚のように跳ねた。
「あふ、や・・・っ、も、だめ・・・!」
「またイっちまうか?」
 声を抑えることも出来ず、ただ翻弄されるばかりのカイは、からかうソルの言葉に首を振り、体を縮め両腕で自らの体を抱き締めた。必死で耐えようとするその様子は強く雄をそそり、嗜虐心を煽る。
 ソルは自らも高ぶっていくのを感じながら、それでもまだ許してはやらずに、耳元に意地悪く囁いた。
「ったく、ぴーぴー泣いてねえで、嫌なら自分で取りゃいいだろうが」
「えっ・・・・」
 予想もしなかった言葉に、カイの抵抗が止み、そして戸惑う瞳が振り向いてソルを映した。
 何を、と問い掛けるような視線をソルは目を細めてはねのける。
「それともずっとそのままの方がいいかぁ?」
「違う、や・・・嫌、だ・・・っ」
「だったら取れよ」
 嫌だ嫌だと繰り返すカイに苛立って、ソルはカイの手を取ると秘部へと誘った。
「指突っ込んで、自分で取りな」
「・・・・・・っく」
 突き放され、カイは居た堪れなくなってソルから視線を外して目を閉じた。自分で指を入れるだなんて出来ないと、まだ残っている理性でソルの言葉に首を振る。
 背後のソルは鼻を鳴らして笑うと、スイッチに指を滑らせた。
 器具の動きがやにわに激しさを増し、カイは閉じていた瞳を見開いて身悶えた。
「ああぁっ・・・! ソルっ、や・・・あ!」
 投げ出された足は何度もシーツを蹴って乱し、上向いた自身も震え先端に白濁を滲ませ、全身は快楽に赤く色付いて跳ねる。
 艶やかに乱れたカイは、引き攣れた呼吸の合間に訴えた。
「やだ・・・これ・・は、もう・・・・・いや、ぁ」
 自分で取れといわれた所で、カイにはどうしたらいいのかわからない。それでもこれ以上は耐えられないと入り口に手を当てたはいいものの、内部まで入れるのは躊躇われて、そのままの体勢でぼろぼろと涙を流した。
 碧い瞳から透明な雫が胸から腹、下肢に落ち、肌を濡らしていく。
 小さな子供のように、堪えもせずに泣きながら、カイはその瞳でソルを振り返り、縋るように告げた。
「・・・ソル・・・が、いいっ・・・あぁ、ん」
 ひどく掠れた、切れ切れの懇願。
 どくん、と身の内で何かが弾けた様な感触があって、ソルは目を細め吐き捨てるような舌打ちを漏らした。
「ちっ・・・」
 ソルは入り口に添えられたままもたついているカイの手をどかし、自ら秘孔へと指を差し入れた。カイが引き攣った悲鳴をあげる。
 カイの欲望から零れたもので濡れそぼったその部分は、乱暴に差し込んだ指もすんなりと受け入れた。未だ奥で震えているもののせいか媚肉はカイの呼吸に合わせるように収縮して、ソルの指をも柔かく包み込む。
 泣きじゃくるカイを片手であやすように撫でてやりながら、ソルは内部を探る指を増やしてそれを指先に捉えた。
「随分奥に入っちまったな・・・」
「ひっ・・・く、ん・・・!」
「そう力むな・・・ほら、取ってやるから」
 スイッチを切り、鎮まった器具をゆっくりと濡れた内部から引き出す。埋められていたものを取り出される感触に細い体はまた震えたが、ソルはそれを優しく抱き締めながら宥めた。
 ようやく解放され、カイはぐったりと脱力してソルに体を預けた。吐く息は熱く乱れ、それに合わせて体は震えて、未だ強すぎた快楽の余韻に流れる涙も止まらない。
 声を詰めて泣くカイの顎をくい、と持ち上げて顔を上げさせたソルは、溢れる涙の粒を尖らせた舌先で舐め取った。そのまま頬に唇を滑らせ、啄むだけの口接けを何度も繰り返す。
 間近で見る深い湖のような瞳が、不意のその行為に瞬いた。
「泣くんじゃねえよ。俺がイイんだろ?」
 ―――今度は俺がイカせてやる。
 力の抜けたままの体を抱え直し、ベッドに組み敷いたソルは、赤い瞳を欲望の色に染めて囁くと、濡れそぼった秘所に猛った自身を一気に突きたてた。
「ふあっ・・・! ・・・あ、あ・・・っ」
 乱暴な挿入ではあったが、快感に蕩けた箇所は傷付く事無くソルを受け入れる。衝撃にカイは呻き、熱い塊に内部を満たされた事で精を放った。
 締め付けにソルも一瞬目を眇めたが、続けて軽く揺さぶってやると、今度は引き抜かれるのを惜しむように、内部は柔らかく蠢いてソルを引き止めた。無意識の内にであろう、カイも自ら足を絡め腰を押し付ける動きを見せている。
 緩やかに責めながら、ソルは肌蹴て露になっている胸元へ、つ、と手を滑らせた。
 桜色に染まった肌には自分がつけた痕が所々に華を咲かせているだけで、他人に触れられたような形跡はないのだが。
 シーツの上で艶やかに乱れるカイを見下ろしながら、ソルは低く尋ねた。
「あのクソガキに、どこ触られた?」
「や・・・は、んんっ・・・!」
 鎖骨からするりと手を滑らせ、脇腹をなぞる。敏感になった体はそれだけでも感じるようで、鼻にかかった声が漏れると共に秘所がきつくソルを刺激した。
 もはや自分の声も届いていないのだろう。快感を追うことに必死になっているカイから返答はなく、ソルは僅かに苦笑したが、改めて足を抱えなおし奥深くを貫きながら一人呟いた。
「全部忘れさせてやる。てめぇは俺だけ覚えてりゃいいんだよ」
 激しい動きにベッドが軋み、肉のぶつかる音と濡れた音が大きく部屋に満ちた。
 カイは柔軟に体を揺らしてソルを受け止め、最奥を突かれ吐き出された熱い白濁を感じると、自らも高い喘ぎ声を上げて再び欲望を弾けさせた。
 ずるり、と生々しい感触を残して引き抜くと、今度こそ完全に力を失ったカイは、ソルにしがみ付いていた手をばたりとベッドに落とし、絡めていた足も投げ出して、シーツに顔を沈み込ませた。
 その脇に体を倒して、ソルはカイを引き寄せる。
 胸に抱きこまれたカイは、人の温もりに安心を覚えるのか、自分から体を丸めるようにしてソルの胸に擦り寄った。何度か身動ぎして心地のいい体勢を見つけ、目を伏せる。
 青年の吐息が少しずつ深く緩やかになっていくのを感じ、ソルは柔らかな髪を撫でて眠りを助けてやった。今日は無理に扱った。あれだけの無体を強いれば、この細い体が疲弊するのも無理はない。
 しかしカイは、眠りに落ちる寸前にふと思い立ったのか、薄く唇を開いた。
「・・・ソル、どうして・・・・・・ここに・・・?」
 今更と言えば今更な問いかけだった。虚ろな声にソルは眉を顰め、少し間を置いて面倒そうに答えてやる。
「偶然通りかかったらあのガキが飛び出てきやがったんだよ」
「・・・偶然?」
「あぁ。・・・もう寝ろ」
 前髪をかきあげてやって白い額にキスをしたソルは、そのままカイを胸に押し付けた。
 普段のカイであれば、答えをはぐらかされたとわかっただろうが、今は眠りの欲求の方が強いらしい。カイは大人しく目を伏せて、今度こそ眠りに落ちていった。
 安らかな寝息を立て始めるカイの寝顔を見つめ、ソルは小さく安堵の溜め息をついた。
 ―――偶然だ、と言うソルの言葉が真実であったのかどうかは、本人以外誰も知るものはない。


 その後、再び顔を合わせたブリジットに、カイは恐る恐る、ソルに何と告げたのかと尋ねた。
 ブリジットは不思議そうな顔をしたが、カイの問いかけに正直に答えた。
「カイさんが、ウチが触ったせいでその気になっちゃったので、ソルさんがもっと感じさせてあげた方が良いと思うんです、って言ったんですけど」
 間違ってませんよね、と可憐に微笑むブリジットに、カイは大いに間違ってます、と表情を強張らせたが、やはり笑顔に負けて口には出せなかった。
 どうしてソルとの事を知ってるんですか、とも聞きたかったが、それこそ聞きたくない怖い答えが返ってきそうで諦める。
 そして逆に、
「ウチ、責任ちゃんと取れましたか?」
 と尋ねられたカイは、無邪気な笑顔にただ憔悴した笑顔を向けるのだった。



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