ご注意・このSSは管理人二人がオフラインで遊んでいた時に「そういえばソルカイで『外』(この場合青○とか外出先で以下略とかの意)でなにもやってねえよ!!(笑)」という無駄な事に気付き、その勢いのままやっちゃった感のあるSS&イラストです。
結構よりによった場所でやっちゃってるので嫌な予感がした人は引き換えしてください。
見てからの苦情は受け付けません(笑)






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   private location
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「!」
 するり、と首を滑る感触に、カイは首を竦めて隣のソルを見た。
 ついさっきまで大人しく正面のスクリーンを見ていたはずの男は、画面も自分も見てはおらず顔を背けている。素っ気無い横顔は暗闇に沈んで、その表情は窺い知れない。
 不意に触れた指先は、そのまま髪の生え際辺りを掠めるように撫でさすって、しかし無造作な動きは明確な意図もなく、ただ気紛れに――もしくは暇つぶしに――触れているだけで、特に興味もないといった様子だった。
 突然のことに思わず出そうになった声を喉の奥に抑え込んで、カイは緩く、周囲を気にしながら身を動かして手の動きに抗議する。
 さっと視線を走らせたところ、まばらではあるが、人がいないわけではないのだ。体を動かせば暗闇の中でも目を引く。映画の音量が小さくはないとはいえ、あからさまな声を上げれば異変に気付く人間だっているかもしれない。
 こんな所で、と恨みがましく睨みつけてみるが、そんな儚い抵抗も効果はなかった。そっぽを向いたまま伸ばされた腕の先は、器用に襟元を緩めいくつかのボタンを外し、柔らかな布を鬱陶しげに肩に滑らせて肌蹴させ、首筋を辿るようにシャツの内部へと滑り込んでいく。
 手の平を当てるのではなく、指先だけを使った悪ふざけは、かえって強い刺激となってカイを苛んだ。



 武骨な指の触れる場所からは抗いようもなく慣れた情欲の炎が灯り、それが全身にゆっくりと染み渡っていく感触に、カイは声を低めて男の名を呼んだ。
「ソ・・・ルっ」
 常のような強さの抜けた、掠れた声だった。抑えた声音は余計に艶めいた響きを帯び、必死の呼びかけではあったものの、しかし映画の音量に打ち消されソルヘは届かない。男がこちらを振り向く気配はなく、指先の悪戯が止む訳でもなかった。
 カイは肩を竦めて体を丸め、切なげに目を細めてソルを見つめた。涙の滲んだ翡翠の瞳は、スクリーンの照り返しで宝石のように煌きながら男を映し、そしてゆっくりと伏せられる。
 薄く開いた唇からは、既に熱く蕩けた吐息が漏れた。せりあがってくるものを抑える事も出来ず、カイは一度強く唇を噛んだ。その痛みに身の熱さを忘れようとするものの、上手くはいかない。かえって痛みも体の感覚を鋭敏にしただけだった。
 肌と首から鎖骨の辺りまでのラインを辿り、時折爪で軽く引っ掻いて、と刺激を続けるソルの手の感触は、やはりごつごつとしていて大きく、戦う人間の、剣を握る人間のそれだ。
 自分のそれよりも随分と大きな手だと、半ばぼんやりとした意識の中でカイは思う。
 なのにその動きはひどく優しく繊細で、見えないせいもあるだろうが、そして普段のソルとは全く違った、愛撫と呼ぶには稚拙でもどかしい動きにも、カイは追い詰められるばかりだった。
 ただ触れられている、それだけなのに。ソルにそういったつもりがあるのかはわからないが、手の動きは的確で、カイは声を殺しながら赤く染まった顔を所在なさげに俯かせた。
 下肢に―――体の中心に、熱が集まっていくのがわかる。
 体は限界を訴えて小刻みに震え、首筋も乱された襟元から覗く肩口も、情欲に煽られた熱さにしっとりと汗ばんでいた。涙を堪えるためにきつく目を閉じたカイだが、それも許されずに指先は過敏になった肌を擽っていく。
 深く長く息を吐いて、カイはうっすら開いた横目にソルを見た。だが、やはり男がこちらを見やる気配はない。
 カイはもう一度ゆっくりと深呼吸し、何度か戸惑いながらも、そっと手を持ち上げて、ソルの腕に絡めた。強く押し止めて、カイは意を決したように口を開いた。
「・・・ソル」
 今度は少し大きく、窘める、というよりは懇願に近い甘い響きで名を呼ぶ。男の耳に確かに届くように。周囲からの注目は正直まだ気になるだけの理性は残っていたけれど、我慢も出来そうになかった。
 呼びかけと、腕を掴まれた事で動きを止めたソルは、そこでようやくカイの普通でない様子に気が付いた、といった態で、闇の中、軽く瞠目した。
 おそらくは嘘でも何でもなく、本当に驚いての事だろう。その様子に、自分だけが一方的に感じていたという事実も恥ずかしく、カイは居た堪れない気持ちになったが、それでもこれ以上の行為には耐えられそうにない。ソルにそのつもりがなくとも、快楽を隅まで教え込まれたこの体は、男の手には抵抗も出来ず浅ましくも開かれていってしまうのだ。
 カイは震える両手で改めてソルの手を掴むと、ゆっくりと押し戻した。
 明るくはない館内ではソルの細かな表情はよくわからなかったけれど、それでも視線に懸命の力を込めて、睨み付ける。熱さに瞳が潤んでいるのは、視界に捕らえた男の姿が揺らいでいるのでわかったが、それでも引くわけにもいかなかった。
 赤い眼差しと視線を交わらせて、カイは小さく頭を振って抗する。
 瞬間、ソルが息を呑んだような気配があった。
 それを肌に針を刺されるような痛みとして知覚したのと、きつく手首を掴まれたのはほぼ同時だった。はっとする間も無く、引き摺られるように席を立たされる。前につんのめりそうになりながら、それをソルに受け止められ、カイは抱きとめられる体勢でソルを見上げた。
 何を、と視線だけで問い掛けてはみるものの、しかしソルからは薄い笑いの表情が返っただけだった。ソルは周囲を憚る事無く立ち上がり、カイを片手に抱いて堂々と―――少し足早に、席を離れた。
「ソル、何を・・・!」
 自分の肩を抱く男ではなく自然と集まった視線に気を取られながら、カイは怒りと当惑が混ざった複雑な声でソルに抗議する。
 けれどそれに取り合う様子はソルにはなく、閉じられていた扉を音も高く開けて隙間に体を滑り込ませ、カイをも強引に引きずり出して廊下へと出た。厚い扉を隔てたそれだけで、映画の音量はまるで聞こえてはこない。
 暗闇から光の下に連れ出されたカイは、眩しさに目を眇めながらも間近からソルを見た。今度は明確な抗議の色を碧い瞳に含めて。
 ソルはその視線にもやはり笑っただけだった。肩に回していた手を滑らせ、胸元まで開かれたままのシャツの襟を掴んで引く。未だ身に残り燻って自身を苛んでいる熱を思い出させる行為に、カイは慌ててその襟元をかき合わせたが、ソルはあえてその抵抗には何も言わず、意地悪く笑みながらうっすらと桜色に色付いた耳朶へ唇を寄せて囁いた。
「悪かったな、坊や」
「・・・え」
 思いがけず滑り出たソルの謝罪の言葉に、カイは面食らって声を失った。
 もちろんこんな公共の場での戯れは許せるものではなく、きちんと謝らせるつもりではあったが、先手を打たれてしまうと毒気を抜かれたような気分になってしまう。
 カイは答える言葉を見つけられぬまま、ただソルを見上げた。素直に謝られることは気分の悪い事ではない。映画を中断させられたのは少し残念だが、次の上映まで待てばいいだけの話だ。それまでには、この熱さも落ち着くだろう。
 だがソルはカイを離す気配もなく、そのまま肩を抱いて入り口でも館内でもなく、人気の全くない奥へと足を向けた。
 この先にあるのは、施設の規模の関係上男女共用となっている化粧室があるだけだ。カイが不思議そうな顔をすると、ソルは改めて腰に手を滑らせてまだ覚束ないカイの歩みを支えながら、説明をするでもなくそこへと足を進める。
 ますます戸惑いに眉を顰めたカイに、ソルは悪びれず呟いた。
「あんな中途半端じゃ辛いだろ。責任取ってちゃんとしてやるから、安心しな」
「・・・・・・な、なッ?!」
 一瞬遅れて、白に戻りかけていた肌が赤く染まった。さらりと簡単に告げられた言葉とその内容との落差に高くひっくり返った声を漏らしたカイを、ソルは有無を言わさずに奥へと連れ込んだ。
 太い腕の中に抱き込まれたカイは驚きに固まったまま身動きも取れず、抵抗する間も与えられずにドアの中へと引き摺り込まれた。思考も凍りついたままで、ソルの意図が全く掴めない。
 目を瞬かせながらのカイの疑問の視線を受け流し、ソルは女性用の化粧台の脇を通り抜け、両手で青年の体を抱きすくめながら一番端の個室のドアを足で乱暴に開けた。狭い中へと、まず呆然としたままのカイを押し込める。
 後ろ手に鍵を閉めたソルは、紅潮した顔で見上げてくるカイに意地の悪い笑みを返した。
 カイがそれによくないものを感じて身を引くより早く、ソルは腰を抱いていた腕を滑らせ、なだらかな双丘、そこから布越しにカイ自身へと触れた。予告もなく欲望に触れられ、カイは電流が走ったような感覚にびくりと大きく体を震わせ、漏れそうになった声を咄嗟に唇を噛んで堪える。
 そこでようやくソルの意図を理解したカイは、ゆるりと刺激してくるソルの手を慌てて押し退けながら、抱きこまれた胸の中で窮屈に体を動かした。
「な、にを、するんですか・・・っ」
 抗議の声が掠れ上擦った。すでに反応を始めている自身に触れる手の動きは、カイが押し止めようとした所で止む事もなく、布一枚を隔てての愛撫ではあるがカイに波のような快楽を与える。
 頭を振って逃れようとするカイをしっかりと抱きとめて、ソルは低く呟いた。
「家まで我慢できねえだろ、淫乱坊や?」
「そっ、そんなこと・・・! や、離し・・・」
「俺は別にいいけどな」
 他人事のように言ってのけあっさりと請われるまま手を離したソルに、カイはぐ、と抵抗の言葉を詰まらせた。
 冷たく呟くソルの声は普段と何の変わりもなく、劣情に煽られた熱は微塵も感じない。気紛れに自分に触れる手もまた冷たいままで、ソルがさして興奮しているでもない事がわかった。彼は自ら明言する通り、あのまま映画を見ていてもこの状態で家に帰るのでも、どちらでもいいのだろう。
 お前だけだと突き放すような言葉を、カイは否定する事が出来ずに俯いた。
 心はソルの与える冷たさと痛みとで竦みあがっているのに、体だけが快感に煽られて熱い。半ばソルの体に身を預けるような体勢で、カイは悔しげに軽く唇を噛んだ。
 浅ましい、ソルの言葉通りに淫乱なこの体は彼の与える熱を求めていて、それを自分ではどうしようもない事もわかっているが、それでも公共のこの場所での行為には、強い抵抗がある。
 頼りなく服を掴んで逡巡しているらしいカイに、ソルは小さな溜め息を吐くと、強く腕を引いてカイに抗う間を与えず体勢を入れ替えた。
 カイを立たせたまま自分は腰を降ろし、低い位置から碧い瞳を見上げる。深く赤い瞳にちらちらと欲情の光が瞬いた。
「ソル・・・?」
 獣のような双眸を獰猛に煌かせたソルを、カイは小さく呼ぶ。不安の色の濃い囁きにも、ソルはその視線の強さを揺らがせる事なく、眼差しでもカイを追い詰めた。反射的に引きかけた体を逃がさず捕らえて、ソルは軽く顎をしゃくって自らの下肢を示した。
「して欲しいなら、その気にさせろ。出来るだろ?」
「・・・っ!」
 残酷に告げられた言葉に、カイの頬にさあっと鮮やかな朱が散った。体を支える逞しい腕に添えられた手が、びくりと大きく震えてシャツの袖に強い皺を刻んだが、カイはそれを離すことも、ソルの腕を振り払う事もしなかった。
 体の熱は全身を隈なく侵していくばかりで、欲望に抗いきるだけの力は、もう、ない。
 紅蓮に燃える炎の双眸に煽られるまま、カイはそっとソルの腕をどかせると、ゆっくりと身を屈めた。
 どかりと座り込み動く様子もないソルの前に膝をつき、上目遣いに見上げてみるものの、男はその視線には取り合う風もない。ひっそりと艶めいた溜め息を吐いたカイは、そのままソルから視線を外して顔を伏せた。
 元々人が二人はいるようになど設計されてない個室は、それだけで息苦しいほどに狭く感じる。けれどその窮屈さも、最早カイを戸惑わせはしなかった。カイは一度だけふる、と頭を振ると、自らソルのベルトへと手をかけた。
 ガチャリ、と金属がたてる乾いた音が、個室の壁に反響してやけに大きくカイの耳を刺激する。その音に一瞬だけ怯えたようになって指先を止めたカイだが、次の瞬間にふわりと降りてきた大きな手に髪を撫でられ、それに促されるようにしてジッパーを降ろした。
 露にしたソルの欲望は、さして昂ぶってもいなかった。俺は別にいい、と素っ気無く告げたソルの言葉を思い出しながら、カイは目を閉じてそれを手に包むと、徐に唇を寄せて舌を這わせた。
 ざらついた舌先に感じる温度は、人のそれではあったけれど、いつも身に収めている熱さとは比べようもないほどに冷たく感じる。顔をあげる事は出来ないが、自分を見下ろすソルの視線もまた冴えているのだろうと、そんな事を考えながらカイは丁寧に欲望を愛撫した。
 その形を確かめるように舌先でなぞり、濡れた音を立てながら唇を滑らせる。ソルにされる行為を思い出しながら、しかしそれより遥かにぎこちない動きで。
「ん・・・う」
 自然と甘い声が漏れた。愛撫を施しているのは自分なのに、舌を這わせるそれよりも自らの欲望が熱くなっていくのがわかる。触れられてもいないのに、体の中心に感覚が集中した。
 それを知ってか知らずか、頭を撫でているソルの手は優しいままだった。ゆるりと髪を梳く手の動きに助けられ、カイは口内へとそれを迎え入れた。次第に硬さを増し、熱さを増していくソル自身を深く咥え、舌を絡め口腔全体で刺激する。
 慣れない行為に苦しげな吐息を合間に漏らしながらも、カイは必死でソルを煽ろうと奉仕に集中する。男のものは、不器用な愛撫にも少しずつ反応を示して質量を増し、カイを苦しめた。
 行為に没頭していると、不意に髪から手が滑り、首筋を指先が辿った。唐突に与えられた快楽に、カイはソルから唇を離して顔を上げた。視線が交錯する。
「ソ、ル・・・?」
「・・・もういいぜ、坊や」
 ソルはぐい、と腕を引いてカイを立ち上がらせ、下から濡れた瞳を覗き込んだ。腰を引き寄せ、乱れていない下肢を寛げてやりながらその中へと手を差し入れて、後孔へと指先を滑らせる。
 うっすらと浮かんだ涙に艶かしく濡れた瞳が、蕾を探る指の感触に泣きそうに歪んだ。
 堪らずに指を口元に運び、声を押し殺すカイをソルは間近から見つめ、一度手を引いた。慣らそうにもこのままでは無理か、と、指をわざとらしく自らの舌で濡れ湿して見せて、再びカイの秘所へとそれを潜り込ませた。
「っく・・・ぁ」
 細い体がまた大きく揺れ、手に噛み付いた隙間からくぐもった吐息が零れた。
 快感に色付いた呼気にソルは満足げに口元を緩めると、内部を開く指はそのままにカイを引き寄せて耳朶に囁きかけた。
「次はこっちだ。・・・わかるな」
 耳に染み渡る低い声は、いくらか掠れ熱を帯びている。聞き慣れたその音にカイはくすぐったそうに肩を竦めると、ごく小さく頷いて首へと腕を回した。
 ついでのように、頬にそっと唇を触れさせる。ソルが苦笑したのが気配でわかり、それだけのことに気を軽くして、カイは足を開き改めてソルへと圧し掛かった。
 重みをかけてきた体を、ソルは腰を支えてやりながら受け止めた。
「ソル・・・」
 熱っぽく囁いたカイは、腕に力を込めて体を浮かせ、自ら屹立したソルのそれへと秘所をあてがい、躊躇わずゆっくりと身を沈めた。
 媚肉を割って内部を暴き、狭い入り口を押し広げていた指とは全く違う圧倒的な質量を迎え入れて、圧迫感に白い喉が仰け反る。濡れた唇から、耐えがたく悲鳴じみた音が漏れた。
「あ、ぁ・・・!」
 衝撃に体を戦慄かせつつも、カイはきつく目を閉じてそれをやり過ごし、添えられたソルの手に助けられながら欲望を身の内に収める。中が爛れそうなその熱さにカイは切れ切れの息を吐き、荒い呼吸音さえ高く響くのを嫌って、ソルの肩口へと顔を伏せた。顔を押し付けて、唇を噛むかわりにシャツに歯を立てる。
 布地を引かれ肩が濡れる感触に目を細め、ソルは自らもきつい締め付けに熱い溜め息を零しながら、全てを収めきった細い体が落ち着くのを待たずに軽く揺すり上げた。
 途端に跳ね上がる体躯をしっかりと抱きとめて、男は楽しげに喉を鳴らしながら青年に声をかける。
「どうした坊や、ちゃんと動かないと自分が辛いぜ?」
 からかう声と共にまた体を揺らされ、カイは言葉もなく身を震わせた。頑ななその様子にソルはひそやかに苦笑すると、腰に添えていた手を離して服にしがみ付いているカイのそれに重ねた。
 ほっそりとした指先を包み込んでやると、おずおずとカイもそれに指を絡めてくる。
 繋がれた感触に安堵するのか、何度か握り返してやると強張っていたカイの体から緊張が解けた。力を抜き、さらに深くとソルを受け入れる。



 最奥までを満たされて全身に悦楽が染み渡ったが、それでもカイは声を漏らさなかった。肩口で震える呼気を吐くカイを緩やかに責めながら、ソルは甘く耳朶に噛み付いた。
「んぅ・・・ん、っ」
「我慢しないで、もっと鳴けよ。どうせ誰も来ねぇ・・・イイ声、聞かせてみな」
 噛んだ部分をねっとりと舐めて吹き込まれた嬲る言葉を、カイは勢いよく頭を振って撥ね退けた。金糸の柔らかな髪を汗ばんだ額、頬に張り付かせ、再びソルのシャツへと噛み付いて否定を示す。
 映画は上映中のはずで、人が寄り付かない事はもちろんカイもわかってはいる事なのだが、それでももしかしたら、という不安は消せない。上映中でも人が訪れる事が絶対に無いとは言い切れず、職員が清掃に現れることだって可能性がないわけではないのだ。
 それに、とカイは浅く息を吐く。決して広くはないこの空間は、自室より声の響きが大きい。ソルの声も深みがかかって聞こえ、それはつまり彼にもそう聞こえているという事だ。
 幾度となく肌を合わせてはきたけれど、抑えの聞かない甘い嬌声を聞かれるのは未だに羞恥が消せないでいる。
 それを悟られてしまうのも悔しい気がして――実際の所、ソルには勘付かれているのだけれど――カイは話題を変えるべく一旦シャツから唇を離すと、背を仰け反らせて腰を動かした。片手は繋いだまま、片腕をソルの肩に預けて体を上下させると、痺れるような快楽が背を走り、同時に男の詰めた息が耳を掠めていった。
 カイ自身も同じく苦しげに息を詰めながら、それでも懸命に身を動かす。
 窮屈な体勢で腰を浮かせ身を貫いているものを引き抜き、自重をかけて再び深く内部へ収めるだけの、不器用な律動だった。それでも敏感な内部を凶器に抉られる感覚に、カイは汗と共に快楽からの涙を頬に零して身を揺らした。
 淫猥に濡れた音と、時折引き攣れる呼吸音が室内を不似合いな淫らな空気で満たしていく。
 腰を支えるだけでしばらく好きなようにさせていたソルは、急かすような締め付けと徐々にカイの呼吸に余裕が消えていくのを感じ取って、繋いだままの手に力を込めて動きを止めさせた。
 ソルに跨ったままの体勢で、カイは不思議そうに目を瞬かせる。その所作は幼いものだったが、浮かぶ表情は快楽に浮かされて艶かしく淫を帯びていた。
 伸び上がって軽く唇を触れさせたソルは、薄く笑んでぼやいた。
「っとに・・・慣れねえな、てめえは」
「えっ・・・そんな・・・の、わから、な・・・ぅんっ!」
 呆れた呟きにカイは乱れた声で反論しかけたが、それも途中で遮られる形となった。腰を支えていたソルの手が肌を滑り、上向いて限界を訴えていたカイの欲望を握り込んだのだ。
 咄嗟に内部のものをも締め付けてしまい、それにも電流が駆けるような快感を味わって、カイは緩やかに体を捩らせた。自身を握り込んだソルの手が、解放を堰き止めながらも先走りを零すそれを巧みに追い上げていく。
 下から突き上げると、切なく泣き濡れた声が漏れた。
「ひぁ、だめ・・・っソル、離し、あ・・・あ!」
「一人で先にイくんじゃねえよ・・・」
 欲望に絡めた指はそのままに、低く、甘く残酷に囁いて、ソルはカイの唇を捕らえた。
 嬌声と懇願の声とを口接けで飲み込んで、性急に舌を差し入れて誘う。暖かな口腔の奥で縮こまっていた舌を絡め取り吸い上げると、観念したようにカイもまた口接けに応え始めた。やはりソルとは比べるべくもなく遠慮がちな動きで。
 深く交わした口接けの後、ソルはゆるりと戒めたカイ自身を刺激して自らも腰を動かした。
「ちゃんと俺も満足させてくれよ、坊や? ・・・動けるな?」
 合図のような囁きと同時に、答えを待たず強くカイを突き上げる。最早声を殺す事さえ忘れて、カイは体を激しく揺らされながら喘いだ。
 ソルの促す通りに腰を動かそうとはするものの、息もつかせぬ荒々しさに、呼吸を合わせることもままならない。それでも戒めを解いて欲しい一心で、カイは必死に体を上下させた。
 突き上げと抜き差しと、バラバラにやってくる快感はカイの思考を白く霞めさせていった。快感だけを追って行為に没頭しても解放は訪れず、自身を貫くソルの欲望は未だ衰えもみせず蹂躙を続けていた。
 先の見えない行為に、カイはついに音を上げた。荒く浅く息を吐きながら、頭を振って身悶える。
「ソル、も・・・う、無理っ・・・」
「無理じゃねぇだろうが、俺がイくまでイかさないぜ?」
 必死の懇願にもソルの返答はにべもなく、戒めの手は緩まない。それどころか、白濁を滲ませた先端を爪先で抉るように刺激され、カイは過ぎた快楽に耐え切れずに大粒の涙を流した。
 透明な涙は薄暗い光の中に煌きながら落ち、肌と衣服とを暖かく濡らしていく。
「・・・っふ、いやあ・・・・・許し・・・て、ぇ」
 伏せていた顔を上げて、時折喘ぎの混じる掠れた声で哀願しながら、カイはなおも身を緩く揺らしてソルへ顔を寄せた。許しを請うように唇を重ねる。恐る恐るといった態で唇が触れ、ソルを煽ろうとしているのか、薄く開いたそこから舌が潜り込んできた。
「ちっ・・・」
 おそらくはもう、まともに意識も残っていまい。無意識の内の、涙の味のするキスを受け、輝きを失わない碧の瞳から止め処なく零れ落ちる雫を戒めた手に受け止めたソルは、低く自己嫌悪の舌打ちを漏らした。
 泣きじゃくりながらもキスを繰り返すカイを改めて抱きかかえ、さすがに少しやりすぎたかと、戒めを解いて追い上げにかかる。解放へ向かった刺激に、カイはもう抗う事も泣く身を任せた。
 繋いだ手に力が篭った。小刻みに震えるカイの手を包み込むようにしてやって、ソルはそれを引き上げると、ふと思い付いてカイの目の前で白い指先に唇を押し当てた。
 ちろりと出した舌で指の腹や爪を舐めると、カイは呆けたような不安そうな、複雑な表情でそれを見つめている。ソルは眉根を寄せて苦笑した。
「そんな顔すんな・・・ちゃんと、イかせてやるから」
「ふぁ・・・あ! ん、ソル・・・ソルっ・・・」
 俄かに行為が激しさを増し、カイは僅かに離れた唇の合間から、嬌声よりも男の名を繰り返し零した。
 他のどんな声よりも甘い響きの、ただ名前を呼ばれる事にソルは確かに煽られて、一際深く腰を打ちつけながら、手の内で脈打つ張り詰めたカイの欲望を解放に促してやった。
 青年の秀麗な表情が、絶頂の快楽に美しく蕩ける。
 手と衣服とを汚して達したカイの強い締め付けに誘われて、ソルもまたカイの中へと欲望を放った。
 放たれたものを全て受け止め、長く深く息を吐き、声も発さず、そして頼りなく甘えるように体を預けてきたカイを、ソルは優しく抱き締めてやった。
 触れ合った部分からは、未だ高い鼓動が振動となって伝わってくる。どこかぼんやりとした表情で胸に耳を当てているカイの髪を撫で整えてやりながら、ソルはふと気が付いたように囁いた。
 おそらくは、聞こえていないだろうけれど。
「・・・我慢できなかったのは、俺の方だな」


「さぁて・・・どうする?」
 甘い余韻を纏わせたままソルの胸に抱きこまれていたカイは、突然尋ねられて目を白黒させた。
 体を離し、それでも狭い個室の中では離れきる事も出来ず、とりあえず立ち上がったカイは不思議そうにソルを見下ろした。
「? ・・・何がですか」
「俺がこの格好で外歩いていいのか、坊や?」
 不意に声を潜めて呟いたソルに、シャツの裾をつまんで見せられて、カイは途端に真っ赤になった。目の前には自分が噛みついた痕が、ソルの指先が示す先には吐き出した白濁が、べっとりとシャツを汚している。
 あまりの生々しい光景に居た堪れなくなって顔を逸らしたカイだが、しかしソルの尤もな言葉に硬直した。
 確かにこのままの格好で外を歩くなど、絶対にさせられなかった。だからといって、シャツを脱いだ姿で出て行かせるわけにもいかず、もちろん着替えなど持っているはずもない。
 さっと見下ろせば、自分の服は多少汗に濡れた程度で、目立った汚れはないようだ。カイは急いで身繕いしながら、特に慌てるでもなく座ったままのソルを見やった。
「すみません、ここで少し待っていて下さい。すぐに外で着替えを買って戻ってきますから・・・」
 身を翻しドアに手をかけたカイは、途中で声を飲み込んで動きを止めた。今まで全く人の気配もなかった外から、俄かにざわめきが個室まで届いて来たのだ。
 考えられる可能性は一つで、カイは顔を青褪めさせながら懐の時計を確認した。
「・・・まさか」
「あーあ、映画も終わっちまったみてえだな」
「い、急いで外に・・・あ、いや、ええと・・・」
 まるで困った風もなく呟くソルをよそに、カイはあたふたと頭を振った。
 上映が終わったという事は、この化粧室にも、少なくはあるだろうが人が押し寄せてくる事となるだろう。そうなれば身動きが取れなくなるが、だからといって今出て行けば館内から出てきた人間と鉢合わせる事になるわけで、そのどちらもカイには避けたい事態だった。
 どうにも動きようもなく顔色を無くしたカイをさらに追い討つ様に、人の喧騒がさらに近くなった。ドアを開ける音と、数人の甲高い声。カイは中途にドアに手をかけたままの体勢で固まった。
 年若い女性が、数人化粧直しに入ってきたらしい。口々に映画の感想を述べては笑い声がそれに混じり、どうやら談笑しているようだ。話の内容は他愛のない、とりとめのないものだが、化粧を直しながらの会話らしく長引きそうだった。
 これでますます外に出るわけにも行かなくなって、カイは絶望的な表情でソルを振り返る。呼吸をする事さえ苦しいような気がした。外の女性たちに、このいつまでも開かない個室を不審がられたらと思うと、気が気ではない。
 しかし一方のソルは別段慌てるでもなく、懐の煙草を取り出そうとして止め、代わりといった風にカイの腕を取った。
 固まったままの体を引き寄せられ、何か名案でも思いついたかとカイは素直に顔を寄せたが、ソルはお構いなしにその唇に自らのそれを掠めた。
 触れるだけの口接けではあるが、壁一枚を隔てた向こうに人がいるこの状況での行動に、カイは青褪めていた顔を耳まで真っ赤にする。抗議の声を上げる事も出来ずにいると、先にソルが口を開いた。そこから声は漏れなかったが、唇を読む程度の芸当はカイにも出来る。
 じっと視線を固定すると、滑らかに唇が動いた。
『どうせなら、次の上映までもう一回やるか』
「・・・っ!!」
『今度は、ちゃんと声殺せよ』
 音もなく、唇の動きだけで告げられたあんまりな言葉に、カイは零れんばかりに目を見開いた。平然と言ってのけたソルの意図を、はっきりと理解する。
 バカ、と罵ってやる事も逃げ出す事も出来ず、カイは一人きつく唇を噛み、男を睨み付けた。今出来る抵抗といったらその位しかない。未だ快楽の余韻の残る美しい翡翠の双眸で、カイは真っ直ぐ窘めるようにソルをねめつける。
 それが何の効果もなく、男を煽るだけだと知りもせずに。





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