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   plaything   ・・・act 3
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天から降り注ぐ柔らかな光。鮮やかに目を灼く太陽の光は、色とりどりのステンドグラスに透けて、暖かさだけを荘厳な堂内に満たした。
その中心に、少年が膝をついていた。
十字に向けて恭しく頭をたれる後ろ姿は、広すぎる堂内でひどく小さく見えるのに、圧倒的な存在感を持って視線を釘付ける。少年のまとう清らかな空気がそうさせるのかもしれない。
微動だにする事のないカイへ、後ろ手に扉を閉めて鍵をかけながら、ソルは素っ気無く問い掛けた。
「―――何を祈ってる」
閉じられた空間に不機嫌さを隠しもしない声は綺麗に反響していく。
カイは弾かれたように顔を上げて振り返った。その表情は驚きに彩られていて、信じられないものを見るような目を向けられ、ソルは苛立たしげに舌打ちした。
少年の驚きはもっともだろう。自分は一度もこの礼拝堂に足を運んだ事などなく、今だって偶然通りかかって少年の姿を見つけなければ、一歩だって足を踏み入れる事などなかったはずだ。
大股に歩み寄ると、膝をついた姿勢のまま、カイは未だ瞠られたままの瞳でソルを見上げた。警戒心の欠片もない、幼さを感じる視線だった。それどころか、自分の姿を見つけたことに喜んでさえいるような。
素直に好意を浮かばせた表情を見ていると、苛立ちは増すばかりだった。ソルは冷めた目でカイを見下ろす。
まだ成長しきってもいない華奢な体。精神的にもあどけなさの抜けていない、女も知らないこの少年を、自分は何度犯し汚してきただろう。
それでもカイは、綺麗なままだ。自分を真っ直ぐに見つめて、好きだ、と口にする。自分が好意の欠片も抱いてはいないと、それを知った上で。
凌辱にも決して汚れることのないその存在が、どれだけ男の嗜虐心を刺激するかなど知りもせずに。
カイはソルの物思いなど考えもせずに、ゆっくり立ち上がって改めてソルを見つめた。
「ソル…どうしてここに?何か急ぎの用事でもありましたか?」
「うるせぇな、何を祈ってんだって聞いてんだよ」
尋ねる声を強くはねのけて逆に質問を返すと、そこでカイは一瞬だけ怯んだように肩を揺らしたが、素直に応じた。肩越しに十字を振り返り、困ったような顔をして呟く。
「何を…というわけではないんです。ただ、こうしてここにいられることを、無性に誰かに感謝したくなる時があって」
『神』の存在を見つめるその表情は、とても穏やかで満たされていた。彼のなかでは、未だ神は絶対的な象徴として存在しているのだろう。依り処、というのが正しいかもしれない。彼は、神に祈ることで自分を保っているのかもしれないと、不意にそう思った。
だとするならそれは何とも哀れで、何とも滑稽なことだろう。
「笑わせてくれるぜ」
ソルは冷たく吐き捨てて嘲笑した。
「あれだけめちゃくちゃに犯されたくせに、まだこの身は神のものですとでも言うつもりかよ?」
「……!」
白い頬に朱が散った。嘲られたことに対してというよりは、行為をまざまざと思い出させる言葉にであろう。
カイは傷付いたような顔をして目を伏せた。
「…私、は…」
両腕で自らを抱き締めるようにして、カイは小さく声を漏らす。掠れ途切れたそれが否定であるのか肯定であるのか、ソルにはどちらでもいい事だった。カイがどういう心づもりであれ、この体はすでに、神に捧げられる聖なるものではなく、自分の言いなりの玩具だ。体だけでなく心も全て、自分の手の内にある。
ソルは手を伸ばして無造作にカイの首元を掴んで上向かせた。乱暴な動作に息を詰まらせたカイに、ソルは口接けるように顔を近づけて、残酷に囁いた。
「思い出させてやるぜ、この体がどれだけ汚れてるか…お前の大好きな神様の前でな」

腕を引けば華奢な体はあっさり傾いで、倒れこむように胸に飛び込んできたカイを抱き締めずに乱暴に壁に叩きつける。痛みよりもその激しい衝撃に驚いて、カイは一瞬目を閉じはしたものの、またすぐに開いてソルを見上げた。
不安げな眼差しだった。何をされるかは予想がついているだろう。ソルは視線に応じず、片手で細い両腕を捕らえ、頭上に戒めた。膝で足を開き体を滑り込ませると、碧い瞳にさっと緊張の色が走る。
「ソルっ…」
「抱いてやるから大人しくしてろ」
呼びかけの声を無視して、重苦しい上着に手をかける。力任せに引くだけで留め具はあっさりと外れた。肩からするりと脱げて床に落ちる音がいやに大きく響いて、戒めた手首が今更ながらにびくりと震えた。
ソルが本気だと悟ったカイは、途端に怯えたように身動ぎして泣きそうな声を上げる。
「ソル、やめて下さい!こんな所で…」
「あぁ?」
必死のカイの訴えに、ソルは面倒そうに目を細めただけで取り合わず、インナーの襟に手をかけて開かせ、白い肌を光の下に暴いた。カイはますます怯えて髪を振り乱し、懸命にソルの手から逃れようとするものの、片手一本の戒めさえ解く事が出来ない。
薄い胸に手の平を這わせれば、官能に色付いた声が漏れた。
「やぁっ…人が、来たら…!」
「誰も来やしねぇよ。…来たら来たで、俺は構わねぇしな?」
扉には鍵がかけてあるとは教えずに、カイの恐怖を煽るように囁いて、ソルはまたゆっくりと手を動かして肌の感触を楽しんだ。きめ細かな肌は弱い刺激にも未だ慣れず快感にさざめいた。
それでもまだ理性が勝っているようで、カイは抵抗を止めることはない。快楽を堪えるように唇を噛み締めて身を捩らせるカイに、ソルは諦めが悪いな、と低く笑った。
つ、と滑るその指先が、硬くなり始めている胸の飾りに辿り付く。僅かに掠めただけでも少年の体は容易に乱れて、ソルは面白そうにさらに愛撫を加えた。
「坊やは、ここを触られるのが好きなんだったな…」
「ひぁ…んっ」
強く先端を押し潰されて、鼻にかかったような声が滑り出る。カイはその声にすら羞恥を覚えて頬を赤らめ、きつく目を閉じる事で快楽を耐えようとするものの、間断なく与えられる刺激はそれを許しはしなかった。
じわりと広がって身体を支配していく熱に、カイはぐったりと壁に体を預けて甘い息を吐く。
「ソ、ル…ぅ」
それでもなお制止を求めた呼びかけは、しかし淫蕩に潤んでいて先を強請っているようだった。ソルは蕩けた表情を浮かべるカイの耳元に顔を寄せる。
「っとに感じやすい体してやがんな…次期団長様がいいザマだぜ」
胸元から手を下げて布越しに触れた欲望は、まださほど硬くはなっていないものの、少しずつ勃ち上がりかけているのがわかって、ソルはそのままズボンをずり下ろして欲望を曝け出させた。
カイは居た堪れずに顔を逸らし、足を閉じようとはするものの、ソルが体を割り込ませているせいでそれも叶わず、その全てをソルの眼前に晒す格好となった。
ソルはふとカイをじっと見下ろす。
まるで神に捧げられる贄のようだと思った。
柔らかな光の元に晒される肢体は、その少年特有の中性的なラインのせいか艶かしさを強く感じさせる。羞恥に震え薄赤く色付いた肌や、所々に刻まれた鬱血がまた、少年に強烈な色気を纏わせていた。
それでも、例えば伏せられた青緑の瞳は、神聖な色を失ってはいなかった。
何よりその瞳が、一層強く自分の征服欲のようなものを刺激するのかもしれない。屈服させ汚してしまいたいと、そう思わせるのかもしれなかった。
目を離そうとしないソルの、観察するように絡み付く視線に、カイは耐え切れずとうとう涙を零した。
「…見ないで…」
「…へえ、坊やは見られてるだけで感じるのかよ?」
からかう声にカイは弱々しく頭を振ることで否定を示すが、剥き出しになっている下肢の中心にあるものはそれを裏切って先程よりも上向いて、カイの欲望をあらわしている。
俯いたカイの頤を取って自分と向かい合わせ、ソルは笑いを含めた声で囁きかける。
「誰が入ってくるかもわからねえってのに…やっぱり見られたいんじゃねぇのか、坊や?」
「…っく…」
もはや首を振る事さえ出来ずに、カイはただ泣いていた。喉をしゃくりあげ、堪えもせずにぼろぼろと涙を流すその姿は、歳よりもずっと幼く見える。嗚咽の零れる薄く開いた唇は、口接けを誘っているようだ。彼自身はそうと意識しているのではないだろうが、それはたまらない甘い誘惑に思えた。
引き寄せられるように、未だ止め処なく涙を流すカイの吐息に触れるところまで顔を近付けたソルは、それでも唇には触れずに、頬を濡らす涙に舌を寄せた。
口腔に広がる熱さと甘さに、ソルは一瞬だけ眉を顰める。
そして、つまらなそうに舌打ちし、手を離した。
「興醒めだ。…イきたいなら自分で抜きな」
戒めを解かれその場に座り込んだカイは、大きく目を瞠ってソルを見上げる。
「…ソル…」
呼びかける声は細く頼りなく、静寂の中に紛れて消えてしまいそうなのに、それでも真っ直ぐにソルへ届く。その響きがもたらす苛立ちのような感覚に、ソルは不快げに眉根を寄せた。
カイは服装を整える事も忘れて、床にぺたりと座り込んだままだった。涙の乾ききらない潤んだ瞳は、呆然とした色を浮かべて自分を映している。
置いていかれた子供のような目だった。中途に放り出された辛さもあるだろうに、そんな欲望の残骸など微塵も感じさせない、どこまでも透明で澄んでいる碧い瞳。ただ自分だけを映して煌いて。
縋る眼差しから鬱陶しげに目を逸らして、ソルは吐き捨てるように呟いた。
「勝手にやってろ」
「……!」
立ち去ろうと背を向けたソルに、はっと我に返ったカイは咄嗟に手を伸ばした。ズボンの裾を掴んだカイに、ソルは冷ややかな目を向けて面倒そうに舌打ちする。
「ざってぇな…ガキのお守りは勘弁だっつってんだよ」
「いや…行かないで、下さい…っ」
見下ろしたカイは、もう泣いてはいなかった。まだうっすらと残る涙は、宝玉のような双眸を艶やかに煌かせていたが、新たに零れるほどではない。
カイは強く裾を握り締め、何度も首を振ってソルを引きとめた。
「もう…泣かないから…言う通りに、するから」
形振り構わずにそこまで口にしたカイは、居た堪れなくなったのか掴んだ手はそのままに、がくりと項垂れた。
ソルは呆れを隠しもせず大きく溜め息をつく。
知っている。この少年は今も行為に恐れを感じている。自分を好きだと言い、どんな要求にも従順ではあっても、幼いその身体はいつも未知の快楽への恐怖に震えていた。今だってそうだろう。身体を繋げる事など、本当は求めていないはずだ。
なのに、彼はこうして欲望だけの性交に身を任せようとする。
その理由も、ソルは知っている。けれど応えてやるつもりは毛頭なかった。
カイに興味を抱いているのは確かだが、それは興味であって好意ではない。彼に対して抱いているものは、彼が自分に抱くような淡いそれとは、全く質の違うものだ。
最初はただの興味だった。真っ直ぐに好意を打ち明けてきた、まだ何も知らない幼子の彼を手酷く犯して、それで彼がどう変わるかと思っただけだった。欲望の意味さえ理解せず自分の言葉に素直に従い、どんな愛撫にも敏感すぎる反応を示してくるカイとの性交を、楽しんでいたふしもある。
鬱陶しく付き纏って来る少年が自分を軽蔑なり恐れるなりして避けるようになれば、それはそれでソルにとっては望むところだったのだ。
それが今は、少しずつ形を変えて、ソル自身をも浸蝕している。
湧き起こる昏い欲望。手の内に堕ちてきた純白の魂を人の欲に塗れさせ、汚れていく様を見たいという歪んだ思い。
いっそのこと壊してしまおうかと、思わないでもない。
「…立てよ」
「え?」
素っ気無い言葉にカイは弾かれたように顔をあげ、不思議そうな顔をソルに向けた。
上げた視線はソルの紅蓮の瞳にはねのけられて、カイは言葉を詰まらせながらもそれに従った。体を隠すように腕を巻きつけながら、ゆっくり立ち上がって次の指示を仰ぐようにソルを見つめた。
挑むような視線だ。何にでも従うと言った言葉に嘘はないと、瞳がそう語っている。
ソルは口元を笑みに歪めると、すい、と指先をすぐ近くの、腰より少し上程度の高さの祭壇へ向けた。
「そこに手ぇついて腰こっちに向けろ」
「…」
カイは無言のまま覚束ない足取りで祭壇へ向かった。表情は平静を装っているものの、揺らぐ瞳に浮かぶものまでは隠しきれていない。
祭壇の端に手をついて、ソルに背を向ける。小さな体に少し大きめのインナーの裾は長く、腰から続くなだらかな曲線と足の付け根のちょうど境目のあたりまでを隠している光景は淫らで、神聖な堂内がそこだけひどく重い空気を纏っているようだ。
そこからすらりと伸びた足が震えているのがわかって、ソルはさらに追い詰めるように足音を立てて歩み寄りながら、愉悦に目を眇めた。
「入れやすい格好しろって言ってんだよ。もっと腰突き出して足開け。そんなんじゃ奥まで入らねえぜ?」
「っ…はい」
命ずる声にカイは僅かに息を呑む気配を見せたが、祭壇に上体を伏せておずおずと足を開いた。羞恥に全身を赤く染めたカイは、ともすれば漏れそうな嗚咽を堪えるように唇を噛んでいて、開いた足の間から覗くものは、緩やかにではあるが確かな反応を見せている。
ソルは双丘に手を這わせ、まだ固い蕾に指を滑らせた。途端に細い体がしなやかに仰け反って震えた。
「声は殺すなよ。面白くねえ」
「いっ…あ、ふ…ぅ」
呟いたソルは不意に前に指を絡め、先走りをすくって後孔へ塗りたくった。僅かな滑りだけを頼りに指を差し込めば、そこは異物を千切らんばかりに締め付けてくる。だがまだ快楽より苦痛が強いようで、唇から漏れるのは切なげな吐息のみだ。
ソルは内壁が引き攣れるのにも構わずさらに奥へと指を侵入させた。無理に捩じ込んだ指で奥まった感じる部分をぐりぐりと押してやると、カイは甘い声を上げて顕著な反応を示した。
「…くぅっ、…あ、ぁん…!」
苦痛の声に混じる明らかに蕩けた声に、ソルは喉を鳴らして笑った。自らも体を倒して覆い被さり、汗ばんだ肌に張り付いた髪をかきあげてやって、露になる淫蕩な表情に声を投げかける。
「堕ちたもんだな…ええ?泣いて縋って指突っ込まれて、それでも足りねぇって締め付けてきやがる」
締め付けるばかりだった媚肉も馴染んで、今は柔軟にソルの指がもたらすものを受け止めようと柔らかに蠢いていた。内を引っ掻くように抜き差しされるものに合わせて腰は揺れ、だが決定的な刺激は与えられず、勃ち上がった欲望は先端に白濁を滲ませて、行為の先を強請るようだ。
楔に貫かれる強烈な快楽を知ってしまっている体は、ただ貪欲にソルを求めて震えている。
カイは荒い呼吸の合間に切れ切れに言葉を紡いだ。
「それ、でもっ…ん、わ…私、は…」
必死で訴えるカイに、ソルは動きを止めることはない。その声すら疎ましげに、事務的に秘部を慣らしていくだけだ。
「あなたの…傍、に…いられるなら…っ、やぁ!」
告白の最後は、ソルが自身を打ち込んだことで遮られた。
指先で入口を広げたソルは、叩きつける勢いで一気に根元までを収めた。戦慄く体を気遣う事なく乱暴に突き上げ、背中を押さえつけて抵抗を封じる。肺が圧迫されか細い悲鳴が上がるのを無視して、ソルは陰惨に薄く笑った。
「健気なことだな。どこまで続くか試してやるよ」
そのまま壊れてしまえ、と。
囁く声は、残酷なほど優しいものだった。



何度目かになるかわからない絶頂に、幼い体が哀れなほど大きく跳ねた。
解放と同時の締め付けに欲望を吐き出し、ずるり、と生々しい音を立てて自身を引き抜く。注ぎ込んだ白濁が共に流れ出して内腿に伝い、その感触にさえ感じるのか、背中から抱きこむように組み敷いた体は小刻みに震えた。
ぐたりと押し付けられた祭壇に体を投げ出して、カイは長い責め苦からの解放に深く安堵の息を吐く。
ソルは構わず、弛緩した体を乱暴に引いて仰向かせた。快楽に蕩けた顔が露になったが、虚ろな瞳こそ僅かに涙が滲んでいるものの、意外にも涙に濡れてはいなかった。
意識も朦朧としているらしいカイは、それでも腕で顔を覆う仕草をする。もう泣かないと宣言した言葉を慮ってか、うっすらとでも涙の見える瞳を晒したくないようだった。申し訳程度に纏わり付いた衣服の裾で、目元を強く拭っている。
強情な子供だ、とソルはうっすらと笑った。だからこそもっと汚してやりたくなるのだけれど、カイはそれには気が付いていないらしい。
ソルがするりと胸元に手を滑らせると、力を失っていた体が感覚を取り戻して再び強張った。あえて刺激を求めて立ち上がっている飾りには触れず、細いながらも綺麗に肉のついたそのラインを辿ってやる。
もどかしい愛撫にくぐもった喘ぎを漏らしたカイは、今度は声を殺すべく目元を拭った袖先に噛み付いた。
眉根を寄せて見上げてくる縋る色の瞳に、ソルはつまらなそうに呟く。
「声殺すな。もう忘れちまったか?」
「……で、も」
冷たい響きの声に、カイは怯えた色を見せたが、それでもソルから目を逸らして、壁にかけられた時計に視線をやった。つられるようにカイの視線を追ったソルも、針の指し示す時間に、カイの呑み込まれた言葉の先を察する事が出来た。楽しげに喉を鳴らして笑う。
「意外に冷静だな、時間気にしてやがったのか?」
天井から注ぐ光も赤味を帯びて、日が沈みかけていることを示している。夕刻の礼拝の時間が近く、カイはそれが気になるのだろう。朝の礼拝と違って、夕刻に顔を出す人間はそう多くないが、全くいないというわけでもない。
それに、長くカイの姿が見えないとなれば、そろそろ探し出す人間も出てくるだろう。カイを探すとなればまず礼拝堂を訪れるはずで、それをカイ自身もわかっているようだ。カイは不安げにソルを見つめた。
「誰か、来ます…」
「俺は構わねぇって言っただろ」
「ソルっ…!」
悲痛な呼びかけを無視して、ソルは身を伏せると胸元に口接けを落とした。ねっとりと肌を舐め、先程までは触れなかった飾りに吸い付く。軽く噛んで舌先で転がすようにすると、耐え切れずに噛み締めた唇から甘い呻きが漏れた。
初めての優しい愛撫に、カイはただ翻弄され、抵抗する術すら持たない。腕には力もはいらず、体格でも力でも大きく勝っているソルを押し退ける事は不可能だった。むしろ縋りつくような動きをしてしまい、羞恥にさっと顔が赤らむ。
けれどやはり誰かが来る、という恐怖の方が強いのか、カイの表情は強張っていて、完全に溺れてはいない。胸元に顔を埋めたまま、ソルは必死で抗うその反応を嘲るように囁いた。
「まだ終わるわけねぇだろうが?」
「や、だめ…っ!」
カイの制止の声より早く、大きく足を開かせたソルはその間に体を割り込ませ、強引に自身を差し入れた。引き攣った悲鳴を上げたカイだが、ソルが放ったもので充分に濡れた秘部は、ぐちゅり、と淫猥な音を立てて抵抗なくソルを呑み込む。
再び奥深くまでを蹂躙されたカイは、衝撃に体を戦慄かせはしたものの、緩く身動きされれば苦痛よりさらに強い快楽に襲われて、ただ頭を振るばかりだ。
それでもカイは、幾分か残った理性で必死にソルに訴えかける。
「っ…お願い、です……ソル…せめて、どこかに、っやあぁ!」
「何だ、早くしろってか?だったらもっと締め付けろ。イカせてみな」
ソルは動きを早めて挑発的に言い捨てた。露骨な言葉にカイは顔を背けて無理だと首を振るが、すでに体は煽られて、ソル自身を奥へ誘い込んでは、きつく締め付けて刺激している。
「いや、いやあ…ソル…」
「嫌だっつーわりには、いい反応してやがるな」
「ちが…あ、ん!やめ……やめて、ください…っ」
途切れ途切れの懇願は、ソルを昂ぶらせはしても留めはしなかった。激しさを増していく行為の中で、カイはソルへ向けて手を伸ばす。伸ばしただけで、触れることはない。躊躇いがちに揺れる指先は、少年の不安とを如実にあらわしているようだった。
触れたいのに触れる事を許されず、届きたいのに届かない。近いのに遠いこの距離は、自分たちの関係をも表しているのだろう。
ソルは不意にその指先を捕らえて引き寄せると、そっと唇を寄せた。
指の腹、爪を丁寧に清めるように舐め、軽く咥えて噛み付く。指をしゃぶるという行為そのものは幼さを感じさせるものだが、ソルのそれは強い性欲に塗れていて、カイの劣情をも煽った。
目を瞠ってそれを眺めていたカイは、指先から浸透していく痺れるような甘い刺激に、泣きそうな顔になる。
眩暈のする快楽にも堪えていた涙がきつく閉じた目の端から流れるのを見て、ソルは咥えていた指を離し、溜め息をついて体を抱え直した。
「しゃあねえな…終わりにしてやるよ」
「あ…はぁ、ん……ああっ…!!」
絡んだままの指がきつく握られ、深く抉られたカイは掠れた嬌声を上げて達した。遅れて白濁を吐き出したソルは、やはり繋がりの余韻を嫌って素っ気無く体を引いてカイの体を祭壇に投げ出した。
場に神聖な静寂が戻る。名残を惜しむように握られたカイの手を払い、ソルは冷たく嘲笑した。
「せいぜい懺悔するこった」
「……」
立ち去るソルは背を向けて、もう振り返ることはない。
残されたカイは、ふと自分の手を見つめて、指先に口接けた。ソルの唇の感触を思い出すように。


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