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   lose control 2
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 緩慢に進む行為は、少しずつカイの精神を侵していった。
 床の冷たさも部屋の冷めた空気も、衣服を取り去られてもなお下がる事のない体の熱の高さが勝って、既に気にならなくなっていた。時折、快感に身動ぎすると触れるひやりとした感覚が、むしろ心地良くさえ感じられる。
 弱い部分を探り当て責められて、体は否応なしに昂ぶっていた。
「ん、・・・ふ、ぁ」
 静まり返った室内に響く、濡れた音と、甘く蕩けた自分の声に、カイはきつく目を閉じる。無駄な事だとは、自分が一番よくわかっていた。目を閉じた所で、何より体は、ソルの行為を受け入れている。
 両腕を、片手で軽く頭上で戒められたまま、ろくに抵抗も出来ずにいるカイに、ソルはくつくつと喉を鳴らした。
 さらりと流れる金髪の合間から覗く白い耳に噛み付きながら、からかうように呟く。
「イイ声で鳴くじゃねえか・・・感じてんのか」
「や・・・ちがっ、あ・・・!」
 すでにたちあがったものを緩く刺激されて、背筋を駆け上がる感覚に否定の声も言葉になりきらない。先端から滲んだ白濁を塗りつけるように愛撫されて、びくびくと体を跳ねさせるが、それすらもソルは楽しげに押さえ込んだ。
 一度、乾いた唇を舌で湿して見せて、ソルはカイの戒めを解いた。
 両腕を自由にされても、しかしカイは抵抗の力を失ってしまっていた。床に両腕を投げ出したまま、先程までとは違う、生理的な涙を透き通った瞳に滲ませる。
 肌を撫で、舌を這わされて。行為の先を焦る事無く、ゆっくりと体を開いていくソルの手は、ひどく優しい。
 ―――陵辱であったならば憎めたものを。
 無理矢理の、乱暴な行為であれば、決して屈しはしなかったものを。激しさを増していく愛撫に堪え切れずカイは嬌声を上げ、その霞んだ意識の傍らで思う。
 けれど、いつでも自分を見ようとしなかった彼の紅い瞳が自分を映している事に、軽い高揚感もあった。
 うっすらと眼を開ければ、獰猛な瞳に射抜かれて、ぞくりとする。初めて見る、自分に向けられたソルの強い感情。悦びを感じている自分を否定できない。
 長い睫毛を濡らして伏せると、ソルは忌々しげに舌打ちして、く、と握りこんだ欲望の根元を抑えた。
 堰き止められる苦痛にカイが引き攣った悲鳴をあげる。
「ひ・・・あ、あ!」
「今更、目を逸らすんじゃねえ。俺を見ろ」
「んぅっ・・・・い、や・・・はなし・・・っ!」
「欲しいって言えよ、素直に強請ってみな。楽にしてやるぜ」
 掠れた声での懇願を熱っぽい声で退けられ、カイは目を開いて縋るようにソルを見た。
 けれどソルは前言を撤回するつもりはないらしく、カイの視線にも手を緩める事はない。カイは自由にされている腕をそろそろと持ち上げ、両手でソルの頬を挟み込んで向き合わせ、瞳を覗き込んだ。
 紅い瞳。自分は、この瞳に何を望んだのか。
 カイは蕩けた浅く荒い呼気を吐く。それはとても単純な事の様な気がした。今まで、自分が目を逸らしていただけで。
 目の前に、見えている。けれどそれは、カイの中でひとつのものにはならない。
 答えを促すように微妙に戒める指先を動かすソルの手に、無意識の内に解放を求めて腰を押し付けるようにしながら、カイはただソルを見つめた。言葉になりきらないものを、視線で伝えるかのように。
 半開きになった唇からは吐息か零れるばかりで、ソルは小さく苦笑混じりの溜め息を漏らすと、そっと宥めるようなキスをした。
「泣きそうな面しやがって。強請り方も知らねえのか」
「な・・・うぁっ、ああ!」
 呟きと共に、ソルの手が今度は解放を促すように強く動く。張り詰めていたものは強引な愛撫にあっさりと達して、白濁がソルの手とカイの内股とを濡らした。
 焦らされた上での解放に、意識を薄めかせて荒く息をつくカイに構わず、ソルはカイの足を大きく開かせると、片足を抱え上げるようにしながら、濡れた指をさらに奥へと這わせた。
 奥まった秘部に触れられて、さすがにカイも弛緩していた体を再び強張らせる。
「ソル・・・っ!」
 反射的な恐怖に、カイはソルを押し留めようと逞しい肩を掴むが、ソルは行為を止めはしなかった。何度か入り口をなぞるようにして、ゆっくりと指を埋めていく。
 細い体が、一際大きく跳ねた。
「つ、ぅ・・・はぁ・・・・、んっ」
 誰にも触れられた事のない箇所をふしばった指に犯されて、カイは違和感と不快感に眉を顰めて呻いた。硬く閉ざされた部分をこじ開けられる感触に身が竦む。けれど異物は少しずつ深く深くへと進んでいった。
 引き攣れる痛みと、共に訪れる甘い感覚に、カイは頭を振り金糸の髪をさざめかせて声を漏らした。
「ひ・・・う、くっ・・・ふ」
「・・・喰いちぎられそうだな」
「いっ、やあ・・・!」
 きつく締め上げる秘部にソルは満足げな呟きを漏らし、先程放ったぬめりを塗りつけるようにしてもう一本指を差し込む。鮮やかに色付いたカイの唇から、今度は明らかに甘く濡れた声が出た。
 内壁を確かめるように動かしていた指が、弱い部分に触れたようだった。何度か刺激すると、また嬌声が漏れ、そして欲望がゆるゆるとたちあがりかけている。
 きつい内部も、快楽に開かれてかいくらか馴染み、カイ自身にも違った感覚をもたらしているようで、ソルの肩にかけられた指先が小刻みに震えていた。
 微妙な抜き差しを繰り返しながら、ソルはカイを見下ろす。
 ほんのりと桜色に染まった頬は、普段の印象とはかけ離れた艶かしい色を帯びており、深い湖の色をした双眸も、頼りなく揺らいでいる。
 見た事もない―――誰にも見せた事がないであろう顔で、カイは自分を見ている。
 この美しい表情が自分が引き出したものなのだと思えば、自然と頬が緩んだ。下肢に熱が集中するのを感じて、ソルは媚肉を引っ掻くようにして一気に指を引き抜いた。
「ふあ・・・・っん!」
 涙の飛沫が床に散り、白い喉が大きく仰け反る。口元に手を当てはするものの声までは殺しきれず、それでもなお声を漏らさんと指を噛もうとするカイに、ソルは舌打ちしてその手を外させた。
 そのまま無造作に手を放し、足を抱え直しながら囁いてやる。
「せっかくイイ声してんだ、我慢しないで鳴いてみろ」
「ふざけ・・・・・、え、あぁ・・・っ!」
 揶揄を含んだソルの言葉に反論しかけたカイだが、それは衝撃に遮られた。熱く昂ぶったものが入り口にあてがわれたかと思うと、身を貫く勢いで押し入ってきたからである。
 傷付けぬ様に腰を使いながら、ゆっくりと最奥まで進めていると、身を暴かれる苦痛にか碧い瞳が大きく見開かれ、そして泣きそうに歪んだ。
「く・・・・あ、んっ・・・ソ、ル・・・・・ソルっ・・・!」
 慣らしはしたものの、圧倒的な質量に痛みは拭いきれず、細い体は強張ってソルをさらに強く締め付ける。
 掠れる声で、おそらくは無意識の内にであろう、救いを求めるように名前を呼び続けるカイに、ソルはそっと触れるだけのキスを繰り返した。
 衝撃に慄いている感覚を他に逃がそうと、色付いた胸の頂きを弄び、浮き出た鎖骨にきつく徴を刻みながら、合間に囁く。
「もっと、力抜け・・・」
「や、できな・・・っは・・・・・うぁ」
 熱の篭った言葉にも、カイは嫌々をするように頭を振るばかりだ。逃げようと身を捩じらせればかえって咥え込んだ熱さを刺激してしまい、それは苦痛とはまた違ったものとなってカイを翻弄した。
 身を繋がれた痛みと、敏感な箇所をまさぐられて湧き起こる快感。バラバラの感覚に身を苛まれながら、カイは知らずの内にソルにしがみ付くように腕をまわした。
 ソルはそんなカイの素直な反応に口元を笑みの形に歪めた。執拗に愛撫を繰り返せば、やがて漏れる声にも甘さが混じり始める。
 馴染み始めた箇所を緩く擦り上げると、それは明確なものとなって、ソルの聴覚を刺激した。
「はあ・・・っ、ん、ふぁ、あ!」
 一度声を上げてしまえば、後は堪えようもない。前の欲望にも手を添えられて深く抜き差しされ、カイは高く溶けた声を部屋に響かせた。
 殊更激しく突き上げながら、ソルはカイの瞳を覗きこんだ。
 青緑の瞳からはもはや理由もわからなくなった涙が零れていたが、それは例えようも無く美しく煌いている。このような行為の最中でさえ、浮かぶ神聖な色は消えていなかった。
 その奥に、自分と同じ渇望が潜んでいる事を、知っている。
 彼が自覚しておらずともそれは確かに自分に向けられたもので、だからこそ惹き付けられる―――捕らわれる。捕らわれながらも欲して、蹂躙して、支配したくなる。
 そうしたところで、決して手に入るものではないと分かってはいても。
 高みにいる彼が、その純白の翼を捨てて、自分の元まで堕ちてくることこそを、自分は望んでいるのだ。
 変わったものだと、自嘲気味にソルは思う。何かに執着する事は長らくなかった事で、まさか自分が、こんなただの子供にあからさまな独占欲さえ抱くようになるとは。
 徐々に行為に慣れてきたのか、組み敷かれたカイがソルの動きに合わせて腰を揺らめかし始めた。ソルは目を細めて笑う。
「・・・中々に淫乱だな、坊や?」
「そ・・・んな、っ! ぁふ・・・・っ」
 言葉でも嬲りながら探り当てた弱い部分を強く突くと、反論を悲鳴じみた声に変えて、カイが大きく身を喘がせた。縋りつく腕に力が篭り、たてた爪がソルの肌に筋を引く。
 限界が近いのか、微妙に蠢いていた内部の締め付け強くなった。ソルは些か乱暴に震える腰を掴むと、叩きつけるように最奥を抉った。
「ひっ・・・! や、うんっ・・・・・あぁ、あ!」
 やにわに激しさを増した突き上げと、張り詰めた欲望を指先で追い上げられて、カイはきつく目を閉じて絶頂を迎える。その拍子に締め上げた内部で、ソルもまた熱い飛沫を放った。
 行為の余韻を嫌うように、ソルは無造作に体を引く。ずるり、と生々しい感触を持って引き抜かれ、達したばかりで敏感な秘部は惜しむようにひくついた。
 満たされたものを失う奇妙な感覚に、カイは思わず切なげな声を漏らしたが、それすらも音となりきらずに静寂の戻った部屋に空しく響くのみだ。
 ぐったりと力を失って床に沈み込む青年に、ソルは小さく呟いた。
「選ぶのはお前だ・・・カイ」
 意識が急速に失われていく中で聞いたその言葉に、カイは眉を顰めてソルを見た。訝しげで、今更何を言うのかと糾弾するような眼差しであった。
 選べと、ソルは言う。彼自身の心は明かさずに、自分に決断を強いる。けれどカイは逡巡も無くソルの瞳を見つめ返した。
 差し込む月光のせいか、時折金に輝いて見える、獣の双眸。宝石のようなその瞳を、とても綺麗だとカイは思った。
 選べと聞かれずとも―――自分はもう、選んでいる。
 この感情の正体は分からずとも、自分は既に、彼と並び立つ事を選んでいる。未だ不安定な心の中で、けれどそれだけは確かだった。
 自分は一生、彼を失えない。
 手の届かない高みに彼がいるなら、自分は翼を手に入れて彼を追うだろう。それは甘い感情とは違うだろうが、それでも自分の中では最も強い、約束のようなものだ。
 カイは僅かに、けれど確かな微笑みを、憔悴した口元に美しくのぼらせた。
 刹那、ソルの驚いたような表情を視界に捉えながら、カイはゆっくりと眠りに落ちていった。


 ―――その感情にお互いが正面から向き合うのは、まだ先の話である。

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 タイトルはラルクの曲でありましたが関係ないっす。自制を失う二人っつー事で。
 どうコメントつけたらいいのやら(笑)私も遠くへ来たもんだ・・・というか咲さん、素敵なイラストに爛れた妄想つらつら綴って本当にごめんなさい!ダークな前編にうって変わって結局ラブで終わらせてるあたり私も非常にアレだ。本当はもっと暗くなる筈が・・・はて? でもこの二人、お互いに素直になるのが怖いというかすれ違ってるだけで両思いなんですよ(笑)
 ソルの方はやはり欲望に忠実というかわかりやすいですけど、カイは自覚がないだけにもう重症って感じで(笑)でも気が付いて認めてしまえば、根が純粋で素直だけに離れたがらなくなるんじゃないかななんてもっと腐った妄想してみたり。ただ傍にいたい、と何となくソルを見つめるカイ。無意識に誘っちゃってるわけで、煽られたソルが事に及ぼうとすれば、慌てて拒むものの結局受け入れちゃうわけよ!(笑)
 ・・・って、ちっとも後書きじゃないなこれ・・・
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